[まんがメモ] メディックス / 西村しのぶ

思えば中学だか高校生くらいのときに初めて読んだ西村しのぶさんのマンガがこの「メディックス」であった。これがきっかけで西村しのぶの漫画を読むようになり、これ自体もやけに気に入って掲載されているスピリッツだけを捨てずに取っておいた記憶がある。結局それはしばらくして捨ててしまったのだが、そこに掲載されていたメディックス、実は今になっても単行本になっていない幻の漫画となっている。

西村さんの漫画は、例えば食事のシーンや夜遊びのシーンなんかの生活のディテールを詳細に描くことで話のリアリティや登場人物への親近感を増す手法がとられている。と勝手に思っているんだが、この漫画では(解剖)実験や試験みたいな「理系学生の大学生活」が結構リアルに描写されている。実はそういう漫画って他にあまり無いので、理系学生はこれを読んで結構親近感を覚えるんじゃなかろうか。この漫画では広瀬浩一と言う、ちょっと真面目でとても普通で結構遊んでる医学部生が主人公になっていて、高校生だった自分は「あー大学ってこんな楽しそうな場所なんだ」と思いつつ読んだ記憶がある。
理系学生を描いた漫画という意味では少し「動物のお医者さん」に似ている気もするが、あちらが「理系大学の社会常識から外れた部分」を楽しく書いているのに対し、こちらは「理系学生の日常、但しちょっとお洒落で粋」と言った感じだろうか。作風の差もあるが、舞台となっている神戸と札幌と言う土地柄の違いも大きいのかもしれない。

もちろん彼女の漫画は生活を描くだけではなく、バニーさんとの恋愛や秘書さんとの恋みたいな西村節が感じられる、軽快だけどちょっと切なく、あくまでポジティブな恋愛が、西村しのぶ最大の魅力(と俺が勝手に思っている)のお笑いのノリを挟んだ軽快なテンポのストーリーとなって展開していく。まるで誰かの大学生活を本当に覗いているみたいに。

1998年発売の「コミック・ファン」03号 西村しのぶ特集では、『来年の春夏あたりに出る「ビックコミックスピリッツ」で復活。そのあと2～3本描いて完結(注: 現在10話まで発表済)。そして小学館から上下巻でコミックが出ることになりました』って西村さん本人が言ってたのに、結局これは流れてしまったようだ。果たして俺が生きている間に完結する事はあるのだろうか...

(実はこっそりコピーを1～8話分くらい持っている私。以前コピーがオークションに出回って西村さんが激怒してたけど、今読んでもこれ面白いんだよねぇ。早く本当にコミックで出してくれないもんかと思っている西村ファンは多数いるに違いない...)